民法改正⑭

2021年02月10日(水)

売買契約に関する主な改正点は3つです。
ポイント1│売主の担保責任のルールを見直した
ポイント2│危険負担に関するルールを見直した
ポイント3│解除の要件を見直した

前回は売買契約に関する主な改正点の3つのうちポイント1の担保責任についてお話しましたので、ポイント2の危険負担についてお話したいと思います。

危険負担とは、双務契約(2つの債務が対価関係にある契約)において、 一方の債務が、債務者の帰責性(責任)なく履行できなくなった場合に、 他方の債務をどちらが負担するのかという問題のことをいいます。

たとえば、売主が、買主に陶器を100万円で売ることになり、その引渡しと引き換えに、代金を支払うものとします。 このとき、引渡し前に、大地震により陶器(目的物)が粉々になってしまったとき、売主の引渡し債務は履行不能となり消滅します。 では、買主は、代金を支払う必要があるのでしょうか?

すなわち、消滅しなかった他方の債務(代金の支払い債務)も、消滅するのかどうか、というのが危険負担の問題です。

債権者主義とは?
このとき、 消滅しなかった他方の債務(代金の支払い債務)は消滅しない、という考え方を「債権者主義」といいます。 消滅した債務(目的物の引渡し債務)の債権者が危険を負担するという意味です。 この場合、買主は、陶器(目的物)を入手できないにもかかわらず、代金を支払わなければなりません。
債務者主義とは?
他方で、消滅しなかった他方の債務(代金の支払い債務)も消滅する、という考え方を「債務者主義」といいます。 消滅した債務(目的物の引渡し債務)の債務者が危険を負担するという意味です。 この場合、買主も、代金を支払う必要はありません。

危険負担に関する主要な改正ポイントは以下3点です。

・ポイント1│債権者主義を廃止した
・ポイント2│危険負担の効果として、反対給付債務の履行拒絶権が与えられた
・ポイント3│危険の移転時期が「引渡し時」となった

ポイント1│債権者主義を廃止した
旧民法は、債権者主義を採用していました(旧民法534条・535条)。 しかしながら、引渡し前に、債権者が危険を負担しなければならないという考え方に対しては、学説からの批判が多くありました。 すなわち、買主が、目的物の引き渡しを受けていない(=現実的な支配下に入っていない)うちから、目的物の滅失という大きなリスクを負わされるのは不公平だ、という考え方です。

そのため、実務では、当事者間の合意により、契約で、「引渡し時」や「代金の支払い時」といった基準時点を定めて、その基準時以降、売主から買主に意見が移転する、と定めて、民法のルールとは異なる運用が行われていました。 たとえば、「危険の移転時期は、目的物の引渡しまで売主に留保する」といったものです。

このような学説と実務の取扱いをふまえて、今回の改正では、債権者主義を廃止するに至りました。

ポイント2│危険負担の効果として、反対給付債務の履行拒絶権が与えられた
改正により、第536条 当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる。
2(略)
すなわち、消滅しなかった他方の債務(代金の支払い債務)は、 当然に消滅するわけではないのです。 しかしながら、 債権者(買主)は、代金の支払いを拒むことができる、と定められたのです。

ポイント3│危険の移転時期が、「引渡し時」となった
旧民法では、売買契約の締結後に、いつの時点で、危険(目的物の滅失から生じる責任)が移転するのかについて明文化されていませんでした。 すなわち、当事者双方の帰責性(責任)なく、目的物が滅失したときに、その滅失がいつの時点で生じたものであれば、買主は、目的物について履行追完請求権などの権利を行使できるのかといった点について明確ではありませんでした。
今回の改正では、危険の移転時期が「引渡し時」であることが明文化されました。

豊田

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