民法改正⑮

2021年03月11日(木)

売買契約に関する主な改正点は3つです。

ポイント1│売主の担保責任のルールを見直した
ポイント2│危険負担に関するルールを見直した
ポイント3│解除の要件を見直した

 

前回は売買契約に関する主な改正点の3つのうちポイント2の危険負担についてお話しましたので、ポイント3の解除についてお話したいと思います。

 

契約の解除とは、契約当事者の一方の意思表示によって、契約の効力をさかのぼって消滅させることをいいます。 解除権には、解除の発生原因が、契約と法律のいずれに定められているものであるかによって、「約定解除権」と「法定解除権」の2種類に分けることができます。

 

約定解除権とは

 契約当事者が、契約で解除の発生原因を定めておくことで、与えられる解除権

法定解除権とは

 法律上、定められた発生原因によって与えられる解除権

 

契約が解除されると、まだ履行されていない債務は、履行する必要がなくなります。 また、既に履行された債務について、原状回復の義務(元に戻す義務)が生じます。 さらに、一方当事者が解除することによって、相手方に損害が生じた場合には、損害賠償責任が生じることもあります。

 

解除条項に関連する主な改正点は、3つです。

ポイント1│解除の要件から「債務者の帰責性」を削除された

ポイント2│催告解除の要件が明確になった

ポイント3│無催告解除の要件を整理した

 

ポイント1

改正により、旧民法543条ただし書の文言(「ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りではない」)が削除されました。すなわち、解除の要件から「債務者の帰責性(責任)」が取り除かれたのです。 その代わり、債権者の債権者の帰責性(責任)によるときは解除できないことが明文化されました(民法543条)。

 

ポイント2

旧民法では、催告解除について、「当事者の一方がその債務を履行しない場合において」と定めるのみでした(旧民法541条)。 しかし、判例では、 相当期間経過時の不履行の部分が数量的にわずかである場合や、付随的な債務の不履行に過ぎない場合については、 契約解除を認めないと示されていました。

そこで、このような判例法理を明確化する趣旨で、「ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りではない。」と定められました(新民法541条ただし書)。

 

(催告による解除)
541条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。ただし、その期間を経過した時における債務の不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、この限りでない。

 

ポイント3

改正により、無催告解除の要件について、場面ごとに整理して規定されました。 旧民法には、無催告解除が可能な場合として、定期行為の履行遅滞による解除(旧民法542条)と履行不能解除(同法543条) のみが定められていました。 しかしながら、次のような点については、明文の規定がありませんでした(同法543条)。

 

・債務の全部または一部の履行不能の関係を明確化

債務の履行が全部不能となった場合    契約全部の無催告解除可
                     (54211号)

 

債務の一部が不能となった場合      契約の一部の無催告解除可
                     (54221号)

 

③債務の一部が不能となった場合      残存部分では契約の目的を達することができなけ                                                         
                     なければ、契約全部の無催告解除可(54223号)                                                  

 

・債務者が債務の履行を拒絶する意思を明確にした場合を明確化

債務の全部を履行拒絶している場合    契約全部の無催告解除可
                     (54212号) 

 

②債務の一部の履行を拒絶している場合   契約の一部の無催告解除可
                     (54222号)

豊田

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